2016年10月11日火曜日

回復期に慣れると...

さて、間を空けてここ2回ほど新卒が地域の仕事に就くことについて書いてきました。理学療法士の新卒の話です。


このテーマで書くことになった発端は、ちょっとした縁があって関わらせてもらっている診療所のPT(理学療法士)とやり取りしたことです。

入院・外来もあるのですが、どちらかというと訪問リハとデイサービスが主体の診療所(グループ)で、個人的に求人の相談を受けています。

僕の周りにいる学生にも声をかけるわけですが、毎年ほぼ全ての学生が病院系志望なのでなかなか難しいんですね。

理学療法士にはまだまだ職場を選ぶ余裕があって、僕が知る限りでも、「来て欲しいのに来てくれない」という施設が少なからずあります。

小さな規模でやっている所や介護系は学生が敬遠する傾向にあって、この両者が組み合わさると、つまり小さな介護系になると、新卒採用は厳しいです。

そんなところから、学生が病院を希望する動機は何なのか、ほんとうに病院から始めないと地域に出ることはできないのか、と考え始めたわけですが、その時にそのPTと交わしたやり取りがあるので、以下にまとめておきますね。

ちなみにそのPTとは、尼崎市を拠点とする阪神医療生活協同組合(診療所グループ)で今、精力的に活躍されている射手園将太先生です^^

一つのエリア内に数カ所の診療所があり、うまく連携・役割分担しながら尼崎駅周辺の地域医療を支えているダントツに地域密着型の診療所グループです。

実は僕も子供の頃、この診療所にお世話になっていたのです...

神戸学院の学生かどうかに関わらず、興味のある学生さんは僕に連絡して下さいね。あ、もちろん既卒でも構いませんので、転職をお考えの方もご連絡を。

連絡先:http://facebook.com/toshiznet
*メッセージは事前に友達申請頂けると確実に届くかと思われます


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S(坂本)「おはようございます」

I(射手園)「いつもお世話になっています」

S「先日、一人決まったようですね」

I「はい」

S「その新卒の方は、応募に際してどんな動機を持っていたんですか? 」

I「動機ですか?」

S「ええ。家から近いとか、給与が良いとか、仕事の内容に惹かれたとか、決め手になるものが分かると、学生に声かけする時の参考になると思うんですけど」

I「そうですね。在宅医療をやっていきたい人で、まずは対象者とじっくり長く関われるデイケアで働きたいという希望がありました」

I「決めるにあたっては、①職場の雰囲気・取り組み方、②1年目からデイケアで働けるのか、③勉強が出来る環境であるかの3点が大きかったようです」

I「①は家庭的な雰囲気で利用者さんとも関わりやすく、スタッフ同士も仲が良く情報の共有や連携が上手く取れていてチームとして対象者にアプローチが出来ているということ、他事業所のスタッフとも連携を取って出来ているのが良い点と見て頂きました」

I「②はうちの体制がその方の希望に沿っていたわけです」

I「そして③は、私自身がその学生さんの在籍されている大学でそこの教員と一緒に実技の勉強会を行っているので、その評判を聞かれていたのと、組織として地域で一番信頼される施設を目指して質を向上させることをテーマに、スタッフそれぞれが勉強を行い、互いに刺激し合いながら取り組める環境で、勉強会も開催したり他の病院や施設などとも連携を取って勉強していることも、学生さんが勉強していく、働いていくにあたって一緒に取り組みたいと思って頂けたことが大きかったようです」

I「また、来年度から二つの大学の教員と来年度から研究で協力していくことや、僕が大学で行っていた勉強会を第一診療所か医生協診療所で行えることになったのも要因ですね」

S「スタッフの構成はどうなっているんですか」

I「医生協診療所(入院・外来)は常勤2名で8年目、9年目の方がいます。第一診療所は僕が11年目で、非常勤がPT3名、OT2名。5~25年目のスタッフがいますので、どちらも勉強するのに困らないスタッフだと思います」

S「一般的に学生は新人を指導する体制のある大きめの病院、特に「回復期」を希望する人たちが多いんですが、本当にそこからスタートすることで力が付くのか疑問なんですよ。射手園先生ご自身の経験から思うところなどがあればそれも学生に声かけする時の参考になると思うんですけど」

I「僕も疑問に思っています。学校で教員からそのように言われるケースも多く、学生も疑わずにそういうものと捉えている現状は把握しています」

I「僕は急性期を少し、回復期の立ち上げとその後少し、慢性期の病院や老健、デイケアの立ち上げ、訪問リハの立上げ、スポーツトレーナーを少し経験してきました」

I「急性期でのICUや心リハ、呼吸リハ、発症後・術後早期はとても楽しく、リスク管理の勉強に大きく役立ちました」

I「慢性期ではリスク管理もそうですし、ポジショニングやシーティング、在宅生活を想定した取り組みや、実際に自宅での様子をみながらの練習を行うことが出来るので、生活に直接関わってのリハビリが楽しかったです。他事業所も含めたスタッフとの連携も大事になってきますし、多くの人と関わってアプローチすることを学べると思います。また、高齢の方に短時間で効果を出すには、動作観察・分析や評価、治療などの技術が高くないといけないですし、自宅内の環境変更や動作の変更など訓練以外の要素の大事さも学べると思いますし、総合的な能力が一番上がるのは在宅かなと思っています」

I「回復期は自分がやっていて楽しくなかったのが強く印象に残っています。正直何もしなくても良くなっていく対象者が多く、自分が行っていることと自然治癒を誤解しているような方も多かったです。治療時間もかなり長くなるので、周りを見ていて無駄な時間も多いと感じましたし、自分は1単位でのリハビリに慣れていたので、多くの時間をかけてしっかり診れたのは良かったですが、長すぎるという印象でした。否定はしないですが、回復期に慣れると他の所ではいきなりは通用しないと思っています」

I「上手くお伝えできてないかもしれないですが、簡単にまとめると、どんな環境でも自分がしっかりとしていれば勉強は出来ると思っています。依存的になりたい気持ちはわかりますが、自分で切り開いて行きたい、成長したいという気持ちが大事だと思います」

S「今後の求人でもそういう人を採りたいわけですね」

I「はい。僕たちはそう思うスタッフの集まりなので、正直軽い気持ちで来ると厳しく感じることも多いかなと思いますが、今回決まった学生さんも自分から成長したいという気持ちが強い方でしたので採用しました。モチベーションと行動力が大事で、それをアシストしつつ一緒に成長していける環境が僕たちの施設だと思っています」

I「働くにあたっては、給料や休みなどの条件にこだわっている方もおられますし、もちろんそれも大事なことですが、長く働いていただく、モチベーションをもって仕事に臨んでいただくには、その施設の方針であったり取り組み方に共有できるかが大きいと思います」

I「僕たちが地域で発信し続けていることが少しずつ周知されてきて、周囲の病院や施設から問い合わせや依頼が増えてきました。時折、勉強会の依頼があるなど、まだ小さいですが少しずつ確実に前進しているかなと思っています。ただ採用となると発信力が弱いと思いますし、上手く出来ていないのだと思います」

S「地域医療からキャリアを始めることに不安がある人も多いですよね」

I「そうですね。でも、医生協診療所の方は入院・外来部門での求人になりますので、なんとか見つかれば良いなと思っています。うちの診療所にも最初は老健に入職しPTとしてのキャリアをスタートさせた人がいます。1年目の半年ほど指導者として僕も関わりその後も経過を見ていましたが、今は立派に医療の部門で結果を出していますし、通所や訪問リハへの理解も十分あり、退院時にサービスの紹介など自宅での生活を円滑に行えるようマネジメント出来ています。そのためケアマネさんや地域の病院などからの信頼も得られ、介護部門との連携もスムーズになっています」

I「介護で働いたからその後がダメだということは無いと思います。個人の考え方や行動力、経験をどう活かすかなど、個人的な要因が大きいのかなと思います」

S 「皆んながそうしているから自分も...という形で進路を決める人も多いですしね」

I「介護領域や診療所など、地域に根ざして活動するような小規模のところはどうしても人気の無い分野になり求人で苦労しますが、良さもしっかりと理解して頂いた上で学生さんが病院と合わせて検討出来るような流れになって行けば良いなと思っています」

I「広報は行っていないですが、職場体験なども行っており、以前は神戸学院大学からも一人学生さんが来られていましたし、他の学校の学生さんも来ることがあるので、そういうところも今後、情報発信していけたらと思っています」

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